ふーりゅーいんじ

ボカロ・アニメ・ゲーム・マンガなどの日記を主に色々書いていくブログです。たぶん ※旧『風流韻事 -謳華-』 改名しました(・∀・)

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長門のお願い

2008/02/27(水) 01:29:57

涼宮ハルヒの憂鬱 SS

【登場人物】
・長門
・キョン


 
 様子見と検査という名の拷問から解放された12月22日の午後。
病院の受付で手続きを済ませてる母親の姿を、これで晴れて自由の身だと、出所してきた前科者のような心境で眺めていた。
世界が消失していた3日間に比べれば各種検査など楽なものだったのだが、昨日の検査に引き続き、俺は人間のまま戻って来れたのだろうかと不安を覚えるほどのトンデモ検査を受けた後では少し憂鬱になっていた。
 午前中の病室にはSOS団のメンバーが休日にもかかわらず見舞いに来てくれていた。
少なくとも本当に見舞いに来てくれたのは朝比奈さんぐらいだろうがな。
ハルヒは目下準備中のクリパの話をしに来ていただけだろうし、古泉は機関の命令かハルヒの付き添いか知らないが、まあそんな所だろう。
朝比奈さんは今日も花を持ってきてくれたようで、今日退院する俺にとっては嬉しいのやら申し訳ないのやら、複雑な気持ちで花瓶に活けられた花を見ていた気がする。

そんな三人に、俺が午後には退院することを伝えると「じゃあ次は24日ね」というハルヒの一言で帰ることになった。
長門はというと、昨日の夜更けに会ったのが最後で今日は来てなかった。ハルヒに聞いてみた所「大切な用事があるって言ってたわ」とのこと。
 大切な用事か。長門の親玉に昨日俺が話したことを伝えるのだろうか?いや、長門ならもう伝えているだろう。そもそも長門を通じてリアルタイムで聴いていたかもしれない。
だとしたらもう少し何か言ってやればよかった。これから先も処分を検討するなんて馬鹿なマネはやめろ、とかな。




 自室に辿り着いた俺は深い安堵の息と共にベッドに倒れこんだ。
やっぱり自分の部屋は落ち着くものだ。俺の記憶的に見れば家と離れていた時間は2日くらいでしかないのだろうが、もう何週間も離れていたような気がする。
 相変わらずの俺の部屋。机の上には俺のカバンが無造作に置かれていた。
カバンを見て思うのも変だが、俺は階段から落ちたことになってるんだなあと改めて思わされる。
そういえば長門が救急車を呼んだとか言っていたな。淡々とした口調で住所と状況を話す長門に救急隊員の人も少し驚いたことだろう。普通の人間なら狼狽して正確な住所や状況を話せず、意味不明な日本語を使うだろう。俺だったらきっとそうだ。
 意識がなかった時どんな風だったのだろうと考えるだけ無駄とも思えることを考えていると、妹が晩飯の完成を告げに来た。いつの間にか俺の傍らに寝そべっていたシャミセンを抱きかかえた妹は、そのままシャミセンを連れ去っていった。
さて、俺も久々の我が家の晩飯を頂くとしますか。


 晩飯を食べ終わり、風呂上がりの俺の部屋。
気付くと携帯電話の光る部分がチカチカ点滅している。誰かから電話か?
着信履歴を見てみると、今日は大切な用事があったらしい長門からだった。
 もしかして何かあったのだろうかという不安に包まれる。
昨日の今日だ。やっぱり処分されることになったとかだったら冗談じゃないぞ!
 すぐさま電話の発信ボタンを押す。
呼び出し音が数回もしないうちに、待ち構えていたかのように電話に出た。いつもの抑揚のない声で、

 『もしもし』
 「すまん!風呂に入ってて電話に気付かなかった。どうした?何かあったのか?」
 『…何か、とは?』
質問を質問で返してくるとは珍しいな。
しかし、どうやら俺が不安に思っていたことはないようだ。
 「いや、やっぱり処分が決定したとか、そういうことじゃないかと思っただけだ」
 『わたしの処分は保留になった』
そうかよかった…って、それでも保留なのか。
 『あなたのおかげ』
付け加えるように長門はそう言った。
まあ俺じゃなくても、ハルヒや朝比奈さんや古泉でも俺と同じことをしただろうさ。
 「まあ長門が消えなくてよかったよ。じゃあどうしたんだ?」
 『あなたにお願いがある』
長門が俺に?何だろう。
 「どういうお願いだ?内容次第では叶えられるかもしれん」
 『明日。午前10時に駅前に来て欲しい』
 「ひょっとしてSOS団の活動か?」
駅前といえばSOS団。明日は日曜だ。活動があってもおかしくない。
 『違う。SOS団の活動ではない。わたしとあなただけ』
活動じゃないのか。またハルヒがよからぬことを企んでると思ったのだが。
二人きりでとは、何か相談事だろうか。長門が相談したいほどの案件があろうものなら俺に何ができるだろう。話を聞くだけなら何とかできそうだが。
 「分かった。そのくらいならお安い御用だ。明日、駅前に10時でいいんだな?」
 『いい』
 「特別な持ち物はあるか?」
聞いてから少し後悔した。遠足の前の小学生か俺は。
 『ない』
 「そうか。じゃあ長門、また明日な」
 『…』

プッという音と共に携帯電話を折りたたむ。
駅前に10時か。早く寝ないとまた遅刻しかねないな。
長門はハルヒみたいに「遅刻!罰金!」なんてことは言わないだろうから安心できるが、それにしても…、
 「長門が俺にお願い…ねえ」
思わず呟いた言葉で思い出した。
そういえば、今日の長門の大切な用事って何だったんだろう?





 12月23日。
 快晴とまではいかないものの、雨は降りそうにない程に晴れていた。
駅前に着いたのは約束の時間の10分前。先に来て待っていた長門の姿を発見した俺は、早歩きに近づいた。俺が来たことに最初から気付いていたのか、長門はずっとこっちを見ていた。
 「よう、早いな」
 「…」
相変わらずの様子だがそれが俺を少し安心させた。ああやっぱり長門はこうだよな。
服装も相変わらずの制服。前に私服は持ってないか聞いたことがあったな。返答はなかったけど。
 「で、これからどうするんだ?」
 「服を選んで欲しい」
は?服?
 「衣服。着る物。身に着ける衣類」
いや、それは分かるんだが…唐突だな。誰のを選ぶんだ?
 「わたし」
…もしかして俺の考えていたことを読んだのではあるまいな。あり得ないとは言い切れない。
とは言え、何かものすごい相談をされるよりはマシか。何をお願いされるか身構えていたのが、安心して少し力が抜けた。まあ服を選ぶだけなら…。うん?
 「ハルヒに選んでもらえばいいんじゃないか?」
最もな疑問を口に出す。男の俺が選ぶより似合う服を選んでくれるだろう。自分で言うのもなんだが俺の美的センスは信用できない。
 「涼宮ハルヒには頼めない」
なんでだ?
 「…」
沈黙。
…わかったよ。いつもお世話になってる長門のお願いだからな。
ハルヒに頼めないわけも何か色々あるんだろう。それはそうと、
 「どこで買うつもりなんだ?」
 「それも含めて、あなたに任せる」
もしかして買う場所を知らないのか。服は買ったことあるのか?
 「ない」
 「そうか」
やっぱり知らないのか。
本好きな長門が図書館の存在を知らなかったくらいだ。市内の情報には疎いのかもしれない。
ましてや普段使わないであろう場所など知らないのも頷ける。
仕方ない。俺が知ってる所というとデパートぐらいしかないんだがな。
 「よし。じゃあ行くか」
歩き出すと後ろから長門もついてくる。変わってないな。


 デパートまでの道のり。休日の駅周辺はこれでもかと言うほどの人で溢れかえっていた。
そのせいか、何度も後ろに居るはずの長門を見失った。
見失うたびに周りを見回すが見つからず、探しに行こうかと思うといつの間にか後ろに居たりする。まったく心臓に悪い。
仕方ないがこうするしかあるまい。
 「すまん長門。嫌かもしれんが我慢してくれ」
はぐれないようにしっかりと長門の小さな手を握って歩き出した。
手を握った瞬間、長門は俺くらいしかわからないであろう微妙に変化した表情を数秒浮かべていたような気がするが、俺が次に長門を見たときはいつもの表情に戻っていた。
あの表情は、一体どんな感情だったんだろうか。




 デパートに到着して衣服売り場に向かう俺と長門。
ちなみに手は繋いだままだ。デパートの人混みで手を離したらまた長門を見失いそうだったからな。いや、俺が何となく離したくないってのもあったが。
歩きながらふと気付いた。そういやまだ聞いてなかったことがあったな。
お前は、どういう服が欲しいんだ?まさか何でもいいと言うんじゃないだろうな。
 「あなたが選んでくれたものなら何でもいい」
そのまさかだった。おい、何でもいいって本当にいいのか?
 「いい」
思わず溜息が出た。
ずいぶんとまあ任せてくれるようで喜んでいいのか。
 「ただ、一般的なものが好ましい」
長門が付け加えるようにそう言った。
そりゃもちろん一般的なものを選ぶつもりだ。俺にはハルヒみたいにメイド服やナース服を買うつもりも勇気もないさ。例えネット通販でもな。


 そして今、俺は長門に似合うような服を必死に模索中である。
女性モノの衣服売り場で何やら唸っている変な男と、休日なのに何故かセーラー服でいる少女がその男を後ろから見ている光景は……何とも言えない光景だろう。
何か気に入ったものがあったら言ってくれと長門に言っといたのだが、あの様子からすると本当に自分で選ぶ気はないらしい。
 長門は俺のイメージ的に白か水色だからそういう服を見てるんだが…。
いかんせん女性の服を選ぶなんてことは初めてだ。どう選んでいいのやら。
当の本人は何が気になるのか、レジのお姉さんを凝視してるし。
さっきは服を選んでるカップルを凝視してたな。人間観察か?
レジの人に任せるってのも考えたが、色々怪しまれるような気もするし、何より長門が俺に選んで欲しいと言ってきたのだ。途中でそれを放棄するのは長門に悪い。
 「ま、頑張ってみるか」
俺の選んだ服が変でも恨まないでくれよ。長門。


 選び始めること数十分。
ようやくこれだと思う服を何点か見つけることができた。残る問題はサイズだ。
 「長門。試着してサイズが合うか確かめてくれるか?」
俺の問いかけに無言で頷く。選んだ服を持って試着室に消えていった。
 数分の時が流れて、そろそろ着たかなという頃合で呼びかけてみる。
 「長門。サイズは大丈夫か?」
 「問題ない」
 そうか、じゃあ――と言いかけた所でシャッとカーテンが開く音が聞こえたかと思ったら、長門が試着室から出てきた。
目を奪われたね。最近の俺はこんなのばっかだな。
もちろんここでは白いワンピースに身を包んだ長門に、だ。
 だぼっとしたタートル、少し広がった袖口の白のセーターワンピース。ついでにインナーも一緒に渡したが…。
すごい似合ってるな。可愛い以外の言葉で表すには俺の辞書では不可能だ。
 「…どう?」
コメントに困ってる俺に長門からの追い討ちがかかる。
ううむ、常套句しか思い浮かばん。仕方ない。
 「似合ってるぞ」
長門は俺をじっと見つめ、それから
 「そう」とだけ言うとまた試着室に消えていった。


 制服に戻った長門から服を預かりレジに向かう途中、そういえば予算がどれくらいか聞いてなかったことを思い出した。
そんなに高いのを選んだつもりはないが、俺だったら無理そうな総額になってる気がする。
レジに出してから買えない、じゃあちょっとな。
お金は足りるか?なんだったら俺が少しは出すが、
 「大丈夫」
予想はしていたがまあそうだろうな。あのマンションに住めるくらいだ、服の3着や4着買えないなんてことはないだろう。
ちなみに今日買ったのはワンピース、インナー、帽子、ダウンコートの四点だ。
いつも制服の上にカーディガンは着てるが、それだけじゃ寒そうだから一応ダウンコートも選んでみたが、まあ着るか着ないかは長門しだいだ。


 ありがとうございましたーというレジのお姉さんの声を後ろに聞きつつ衣服売り場を後にする。
時刻は午後1時過ぎ。駅前にいたときから三時間近く経過していた。どおりで腹が減るわけだ。
 「長門。飯、どうする?」
 「…」
 「俺が勝手に決めてもいいか?」
 「…」
まあいいか。
 「…行くか」


 せっかくデパートにいるんだから中にあるファミレスで食うことにした。
デパート内はどこも混んでいて数十分待たされることを覚悟したが、すんなり空いてる席へ座ることができた。
 料理を食べ終えるころに、長門に今日のお願いはそれだけかと聞いてみた。
 「次は図書館に」
次は、か。
いくつあるのか最初に聞いておけばよかったのかもしれん。
 俺はわかったよと言いながら心の中ではいつもの常套句を言っていた。口に出すのも変だが、あえて言っておこう。
 「やれやれ」




 閉館15分前を告げるアナウンスが図書館内に響き渡る中、長門は前回と同じくやはり彫像のように本棚の前にいた。
図書館に着いてからのことをまとめると――、
着いて早々、長門は一人ふらふらっと本棚の波の中へと消えていった。
とにかく俺も時間をつぶさねばなるまい。適当な本を見つけてたまたま空いていた席へと座り、読書に耽っていた。
 やはりというか、俺はいつの間にか眠ってしまったようで、館内のアナウンスで起きれたのは奇跡に近いかもしれない。よく注意されなかったものだ。
荷物を持って長門を探しに歩くこと数十秒。見つけた――というわけだ。
長門。閉館だからもう出るぞ。
 「…」
三点リーダが返ってくる。
俺もリーダで返そうかという案を即却下し、前回の対処法を思い出して、貸し出しカードは持ってるか尋ねてみる。
長門がどこからか、前に作ってやった貸し出しカードを俺に見えるように出してきた。

 受付に行き、本を借りて図書館を出た。六法全書並みの厚さを誇るその本を長門は大事そうに抱えていた。本当に厚モノ好きだな。
 当たり前だが冬は日が短い。外はもう真っ暗だった。
ふと何で俺は長門と図書館にいたんだっけという疑問が生まれ、長門のお願いだったことを思い出した。
俺は長門の方を振り向きながら、
 「お願いはこれで終わりか?もうあまり時間もないぞ」と聞いてみた。
じっと俺を見上げて
 「あと一つだけ」
と小さく呟くように言った。
今度はどこだ?

 「わたしの家」




 まあ買った服も持って行かなきゃならんし、もともと行くつもりだったんだが…。
何だろう。今日の長門は少し変だった気がする。
妙に人間っぽい――と言ったら変だが――反応をしていた。
服を試着した時もそうだ。
今までの長門なら、どう?なんて聞かなかったんじゃないだろうか。
それに繋いでいた手を離した時もだ。
俺の気のせいだと思っていたのだが、少し残念そうな表情をしていたような気がする。
加えて最後の

――わたしの家。

この言葉を聞いた瞬間、既視感に襲われた。
忘れられるわけがない。
数日前、あっちの世界での長門にも同じことを言われたことを。
今日長門を見るたび、チラチラ見え隠れしていたあっちの世界の長門のことを。

・・・くそ。俺はこっちの世界を選んだ。そのことには後悔なんてこれっぽっちもねえ。
だが、あっちの世界が嫌だったわけじゃない。もともと同じだったんだ。嫌いになれるわけがない。
宇宙人も未来人も超能力者も神様みたいな力を持つ奴も存在しない世界かもしれないが、
ハルヒも長門も朝比奈さんも古泉もいた。
 こんな自己を弁明するような言葉を並べる時点で答えているようなもんだな。
考えないようにしていたが認めねばならないようだ。

―――そうさ。俺はあっちの世界に少しばかりの心残りがある。

 心残りってのは、こっちの世界とあっちの世界では唯一違った性格を持っていた、長門のことだ。
 こっちの長門には俺たちがいる。
だが、あっちの長門はどうだ?引っ込み思案で奥手な長門は部室でもひとりぼっちだった。
 エンターキーを押す前、白紙の入部届けを受け取った長門を思い出すと一層何とも言えない気持ちになる。
 あの後―、俺が消えたであろう後もあの世界は存在しているのだとしたら?
あっちの長門を安心させるつもりで言った、SOS団での俺の肩書き。
世界が存在し続けているのなら、消えた人間が戻ってこないのなら、俺の言葉で長門がどう安心できる?
それにこっちの長門。

 俺の選択は、あっちの長門だけじゃなく、こっちの長門をも不幸にしたんじゃないか?

 長門は俺に選択する権利をくれた。
俺は俺の思うままに元の世界を選んだ。
だがそれはハルヒや朝比奈さんや古泉、そして長門のことを思ってではなく、あくまでも俺の願望だ。
 そしてその選択は、長門の望んだ世界を否定したことになる。
長門の望みを。『普通の高校生として生きる』ことを、俺は否定しちまった。




 「入って」
 苦悩の世界に入り込んでいた俺の意識が、長門の声で引き戻される。
そこは既に長門の部屋の前だった。
俺はいつの間にか長門と共に部屋の前まで来ていたようだ。そして、いつまでもボーっと突っ立ってる俺に痺れを切らした長門が声をかけた…みたいだな。
俺は生返事をして長門の後に部屋に入った。

 中は相変わらずの殺風景な部屋だ。いや、前より少し綺麗になってるのは気のせいか?
 「掃除、したのか?」
荷物を横に置き、コタツ机の前に座りながら長門に聞いた。
台所からお茶組みセットを運び終えた長門は、俺の正面に座ってから
 「昨日、した」とだけ言った。

 長門が注いでくれたお茶を飲み干して落ち着いたところで、お願いとやらはどんなのか聞いてみた。
考えているような、言葉を選んでいるようなそんな表情を見せていたが、
やはりいつもの平坦な声で長門は話し出した。


 「今日はあなたにお礼がしたかった」
お礼?何のだ。
 「わたしの処分を保留にしてくれたこと」
そんなの別に構わんさ。それにお礼なら病室で聞いたしな。
ありがとう。なんて初めて聞いたんじゃなかったっけ?
 「それでもわたしはお礼がしたかった。だからあなたをここに呼んだ」
 複雑な気分だ。長門から見れば俺は長門を助けたように見えるかもしれないが、元々は俺の選択んせいで処分されそうになったはずだ。それでもお礼…か。
俺はお礼を言われるようなことはしてない。むしろその逆だ。俺は謝らなくちゃいけない。
さっき長門の部屋に入る前まで考え悩んでいたことが溢れ出る。
 「なぜ?」
 「お前の望んだ世界を、俺は否定しちまった」
長門は少し考えるように沈黙し、再びゆっくりと口を開いた。
 「わたしはあなたが世界を再改変してくれてよかったと思っている」
俺にわかりやすいようにか、ゆっくる間を空けながら話してくれる。
 「改変された世界では涼宮ハルヒの力も失われ、進化の可能性は永遠に閉ざされたままだった。それに――」
 「今のわたしは、あの世界を望んでいない」
いや、お前はあの世界を――と俺が言いかけた所で、長門が付け加えるように
 「でも」
俺をじっと見つめながら、

 「あの世界がわたしの望んだ世界だったならば、わたしはわたしの望んだ世界を否定する。今のわたしの望む世界は、あなたが選んだこの世界。あなたが選んだこの世界で存在すること。それがわたしの望み」

そう一気に言い終えた長門は湯飲みに視線を落として沈黙の権化と化した。
 俺はというと何て言ったらいいかわからなくて沈黙していた。
長門が、自分が改変した世界を否定し俺が選んだ世界を望むと言ってくれたことが、俺は素直に嬉しかった。
この世界を選んだことで長門が辛くなるのが嫌だったからな。

俺も長門がこの世界で存在してくれることが望みだぜ。一緒だな。
 「…」
そう言っても長門は沈黙したままだったが、微妙に変化した表情は少し嬉しそうに見えた。


 「そういや、お礼ってなんだ?本か?」
さっきの会話を思い出した俺は長門なら本でもくれるのかと色々想像しながら聞いてみた。
長門も俺の質問を聞いてから思い出したように「待ってて」と言って、台所に消えていった。
 数分後。長門は大きな鍋と炊飯ジャー。お皿二つ、スプーン二つを何度かに分けて持ってきた。ん?このにおいは…。
 「カレーか?」
頷く長門。
鍋の中身は、まぎれもないカレーだった。
 「今作ったのか?」
普通なら短すぎる時間だが、長門なら出来そうだ。
 「昨日作った」
ひょっとして大切な用事ってのはこれか。
付け加えるように、
 「そう。お礼」と言って準備をし始めた。
…お礼は長門の手料理か。
 「嫌い?」
微妙な表情をしていた俺を見てか、ご飯を皿によそう手を止めて長門はこっちをじっと見ていた。
 「いや、好きだが…」
 「そう」
なら問題ないと言わんばかりに作業を再開する長門。いや、手料理って所を考えてたんですよ。長門さん。
でも、これはすごく希少価値があるかもしれない。あの長門の手料理だ。滅多に食べられないだろう。
 二人分のカレーが盛り付けられ、「いただきます」と二人で合唱。
ふむ、見た目は普通のカレーライスだ。野菜も適度な大きさで切ってある。
さて…、味は――

 普通にうまい。

若干辛めだが問題ない。ちゃんと料理作れるんだな。
 「おいしい?」
お茶を飲んだときもこんなこと聞かれたな。
初めて来たときのことを思い出す。
 「ああ。うまいぞ」
今度は曖昧な返答ではなく素直な感想を口にする。
長門は相変わらず、
 「そう」
それだけ言って自分も黙々と食べることに専念しだした。




 すっかり遅くなってしまった。
玄関で靴を履きながら、また母親に何か言われるんだろうなあと考えていたりする。
 「じゃな、長門。また明日」
長門はコクンと少しだけ首を縦に振った。
扉を閉めて長門の姿が見えなくなる少し前に
 「また明日」という小さな呟きが聴こえた気がするが、多分気のせいだ。


 長門の望み。
俺のエゴで選んだ世界だったが、それが同時に長門の望みでもあるなら、
これから先も、もしまた改変されたりしても――そんなことはもう二度と遠慮したいが――、俺は迷うことなくこの世界を選ぶことができる。
 誰かのためにこの世界を――みたいなカッコいいことを言うつもりはない。それにそんなの俺には似合わん。

 ――ただ。

 長門は俺の望みを叶えてくれた。
だから、今のSOS団での俺がある。
SOS団員の望みなら、長門の望みなら叶えてやらなきゃならないだろ。なぜかって?

 なぜなら俺は――。



 SOS団の団員その一だからな
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コメント

SS読ませていただきました~
鳥肌連発で萌え死ぬ・・・w

本格的に古泉から有希へ浮気しそうですw
なかにわ #ZGh9VqZw|2008/02/27(水) 10:12 [ 編集 ]
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#|2008/03/05(水) 01:52 [ 編集 ]
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